分子イメージング

当社が研究している遺伝子治療では、症状の診断及び治療後の評価にモレキュラー(分子)イメージング技術を活用いたします。モレキュラーイメージング(MI)とは、生体内での細胞や分子プロセスに関わるコミュニケーションプロセスを可視化(画像化)することで、従来は静的、定性的に判断していた生体内変化を動的、定量的な判断を可能とする技術です。
ある特殊な診断薬をサイクロトロンで作ってPETをとることで、症状の進行や治療後に正確に遺伝子の導入ができているかどうかをMIで見ることができます。
当社が実施する遺伝子治療においては欠かせない支援技術であり、当社はこのMI技術に10年以上携わり、研究・開発を進めてまいりました宇都宮セントラルクリニックにおいてその診断を実施いたします。

※ 宇都宮セントラルクリニックhttp://www.ucc.or.jpは当社取締役佐藤が代表を務める医療法人です。

当社研究の特徴

FMT-PETによる遺伝子治療支援

MIの位置づけ

当社が研究及び治療を実施する具体的なターゲットは、
①パーキンソン病に関する早期診断や遺伝子治療の効果判定のためのFMT‐PETによる検査
②アルツハイマー病に関するアミロイドベータ(Aβ)PET薬剤の合成
③ALSに関するDKIイメージングなどを駆使した早期診断と遺伝子治療への導入です。
これらの研究開発を行いながら、実用段階にあるFMT-PETに関しては治療と更なる技術の向上を推進してまいります。

FMT-PETとは

FMT([18F]6-fluoro-m-tyrosine)は、ドパミンの合成に必要な芳香族アミノ酸脱炭酸酵素(AADC)の基質であり、AADC活性の定量的評価に利用されています。FMTは、ドパミン神経終末に存在するCOMTという酵素で代謝されずドパミン神経細胞に特異的に集積するため、高精度の画像が得られます。
FMT-PETは、パーキンソン病の診断に大変有力です。とくに類似の症状を示す本態性振戦や薬剤性パーキンソニズムとの鑑別に役立ちます。また、多系統萎縮症(MSA)や進行性核上性麻痺(PSP)のようなパーキンソン病関連疾患でも有効性が期待されています。
さらに、パーキンソン病の重症度を推定することが可能で、定期的にフォローをする事で疾患の進行状況も観察する事が可能です。

FMT-PETの実績

これまでに行ってきたパーキンソン病に対する遺伝子治療の臨床研究でFMT-PETを活用してきました。遺伝子治療前には、両側の被殻でFMTの取り込みが顕著に低下しています(下図 左)。AAV-AADC遺伝子を両側の被殻に導入する遺伝子治療を実施したところ(パーキンソン病 遺伝子治療の概要)、両側の被殻でFMTの取り込みの増加を認め、5年後にも持続しています(下図 右)。実際に症状もほとんど動けない状態からら独歩通勤できるまでに改善しました。

これまでの成果と今後の予定

当社では今後、アルツハイマー病に対してはアミロイドβイメージング+FDG、もしくはタウイメージングを、ALSに対してはDKIイメージングなどを駆使した早期診断と遺伝子治療支援の、実用化に向けた研究開発を行ってまいります。