当社は国際的な技術優位性を確保するために、CNS(Central Nervous System:中枢神経系、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病を含む)遺伝子治療用ベクター製剤の新規製法開発を開始いたしました。
当社は今後遺伝子治療用ベクター製剤の生産を自ら行い、薬事承認取得後は、ベクター製剤を医療用医薬品として販売するほか、国内外に遺伝子治療センターを展開し、難病等に対する遺伝子治療を自ら実施していくことを計画しております。
現状の治療用ベクター製剤の作製に要する時間は長く、また作製費用も高額ですが、新しい製造方法(バキュロ法:大きなタンク内で微生物に目的遺伝子を組み込んだウイルス・ベクターを大量に生産させる方法で、インフルエンザワクチン等を大量生産する最新技術)が実用化された場合には、その作製時間・費用を数十分の1から数百分の1とすることが可能であり、遺伝子治療の実現にはこうした効率の良い大量生産方法を確立することが重要となります。
欧米においてアデノ随伴ウイルス(以下、「AAV」)を使用する遺伝子治療研究が始まっており、今後少なくともCNS領域の遺伝子治療におきましては、AAVが遺伝子導入の主要な方法になることが想定されます。特にパーキンソン病用のベクター製剤に関しては、世界的な競合企業であるUniQure社(本社:オランダ)、Voyager Therapeutics社(本社:米国)でもAAVの新規製法開発(バキュロ法)に取り掛かっており、技術優位性を確実なものにするためには、当社でも新規製法開発を急ぐ必要があります。
当社の遺伝子治療は、神経細胞選択的に安全かつ効率的に遺伝子導入を行うことが可能な、特殊なAAVの技術(特許出願中の学校法人自治医科大学との間で特許使用契約済み)を基盤としております。ALS(筋萎縮性側索硬化症)やアルツハイマー病等の神経性疾患の遺伝子治療では、脳や脊髄から可能な限り多くの神経細胞に遺伝子を導入することが望まれており、この技術の潜在的優位性が必須と考えられます。
今後は、現在実施中の共同研究並びに本件の新規製法開発と並行して、治験及び先進医療制度の適用申請の準備を進め、遺伝子治療の早期実施に向けた活動を行っていく予定であります。